閉会になった後、みんなで負傷者の様子を見に行った。
 三番目の部屋に、通信と構造担当のアロイが寝ていた。意識はあるのだが、ちょうど鼾をたてて寝ていた。事故の時、研究室に居て、衝撃で胸部を強打したのだった。レントゲンが無いが、肋骨にひびが入っているらしいとの診断だった。今のところ、命には別状ないが、体を動かすと激痛があるらしい。
 続いて、一番奥のリーダーの部屋に入った。ナンスは、集中治療器による監視下に置かれていた。頭に巻かれた包帯に血が滲んでいる。一応、傷は縫合してあるが、衝突のショックで転倒して頭部を強打し、意識は失ったままだ。アロイが、激痛に耐えて止血の応急処置をしたので致命傷にはならなかったが、なるべく早く本格的な治療を受けるべきだと、リーマンは言っている。
 四人はそっと部屋を出ると、それぞれの個室に引き上げた。
 鉄腕は、ベッドに横になって考えながら、頭を使っても酸素摂取量が増える事が気になった。
 一時間後、集まった者は、皆、焦燥しきった顔でだった。電力配分を決めるために集まったのではなかった。配分する電力は、残っていなかった。
 四十分くらい前、ナンスの集中治療器が警報を鳴らした。
 真っ先に飛び込んだ鉄腕は、集中治療器の表示が直ぐには信じられなかった。部屋の照明を点けてみたが、点灯しなかった。表示の通り、電源が切れた事が証明された。
 集中治療器は、内部のバッテリーでバックアップ運転していたが、内臓バッテリーは、本電源が復電するまでの時間稼ぎをする以上の能力はない。遅れて飛び込んできたオハラは、直ぐに復電の作業を始めたが、間も無く、酷く疲れた表情で戻ってきた。連絡トンネル内での漏水による漏電で、主電源のほぼ総てが失われていたと言うのだ。
 集中治療器のバッテリーは、間も無く切れる。それまでに何とか電源を確保したいが、その電源が無い。集中治療器が止まったからと言って、直ちにナンスの命が失われる訳ではないが、格段に危険が増す事には違いがない。考えた末、空調システムのバックアップ電源を取り出し、集中治療器に接続した。
 一段落した後で、どの程度バックアップ電源が持つか確認したところ、集中治療器だけなら六十時間程度だった。その代わり、二酸化炭素の除去は一切行えない。
 B棟内の空気を吸い尽くしたら、全員が死ぬ事になる。しかも、この一時間での消費量は安静状態の十倍近い量となった。負傷者の酸素消費量も多く、鉄腕が計算した予測値は深刻な値となった。
「残りは、二十時間足らずか」
 オコーナーの声は、苦悩で掠れた。
「十五時間後に、一度だけ二酸化炭素の除去をやりましょう。そうすれば、今から四十時間持ちます」
 鉄腕の意見に、リーマンは首を振った。
「酸素分圧が下がると、人間の体は、呼吸数を増やして獲得する酸素量を増やすように反応する。呼吸数が増えるから、安静状態でも基礎代謝が増え、酸素の消費量は増える。アムスの予測値は、現在の消費量をベースにしているよね」
 鉄腕は、素直に頷いた。
「それなら、予測値の八割程度の時間しか持たないと考えた方がいいな」
 リーマンの修正に、鉄腕は異存なかった。
「残りは、三十五時間あるか、ないかだ。クストーが回航されてくるまで待てない。各自で、自力脱出の方法を考えてくれ。そのせいで酸素消費量が増えるのは、認められない。できる限り安静にしながら、頭だけを働かせてくれ。以上だ」
 四人は、自室のベッドに潜り込んだ。そして、体温維持のために酸素消費量が増える事を防ぐため、有りっ丈の毛布をかぶった。

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